「相手の話を聞くのは難しい」

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以前、「相手の立場に立つのは難しい」ということについて書きましたが、
「相手の話を聞く」のも、同じように難しいことです。
皆さんは、自分が相手の話をどのように聞いているか、考えたことがありますか?

日本で育ち、日本語で教育を受けた人同士であれば、
よほど難しい言葉や専門用語が使われる場合は別として、
大体の内容はわかっているものだと思って話を聞いていることでしょう。

けれども、後になって、
「○○□□と言ったのに、聞いてなかったの?」
「あのとき、 “わかった” って言ったじゃないか」という事態になったことはないでしょうか。

実際には、どれほど真剣に聞いたとしても、
重要な言葉を聞き損なうことや、言葉の聞き間違いをしていることはありえます。
そこまで重要な言葉ではないけれど、
語尾や “てにをは” の聞き間違いによって、違う意味にとらえてしまうことも。

話を聞くという行為は、耳から入る情報を頭の中で留めながら、自分の中に蓄積されている情報と照らし合わせ、状況を把握したり判断したり、思考を巡らせる、
しかも、そうしている間にも、次から次へと新しい情報が入ってくるのですから、
なかなか大変な作業でもあります。


また、聞き間違いというより、自分が聞きたい言葉に変換されて聞いていることもあります。
あるいは、自分がそのように聞きたいかどうかにかかわらず、自分にとって馴染みのある聞きなれた言葉や表現に変換されるということが起こったりもします。
こういった変換は無意識的に行われていることが多く、自分では気づきにくいものです。


では、聞き間違いがないように注意を払ったり、忘れないように記憶したり、そういったことが上手くできればよいのでしょうか?
―― 実は、そういうわけでもありません。

確かに言葉としては正しく聞いているのに、何だか話がかみ合わなくて、お互いに、もやもやイライラしたり、関係がこじれたりする経験はないでしょうか。
この場合は、言葉の捉え方や理解が人それぞれ違うという前提をわかっていなかったり、わかっているとしても頭から抜けていたりすることが考えられます。

日常生活で何気なく交わされる会話も、
聞いた言葉から思い浮かべるイメージや刺激される感情などは、人によってさまざまです。

たとえば、「部屋を片付けてね」と言われたとき、「部屋」とか「片付ける」という言葉そのものについての、お互いの知識が違うということが考えられます。
それだけでなく、その人がそれをどのように経験してきたか、あるいは、経験していないかによって、言葉には、その人独自の意味づけがなされているのです。

「今日は何時ごろに帰るの?」と聞かれたときにはどうでしょう。
“ 帰る時間を聞かれているんだな ” と認識した場合と、
“ 前後の状況を考えると相手はどういう意図で聞いているんだろう ” などと想像しながら聞いている場合とでは、返答の仕方も変わってくるのではないでしょうか。

聞いたときの体調や気分、相手との関係性によっても、聞こえ方や受けとめ方が違ったりします。
また、「片付けてね」「片付けてよ」「片付けなさい」「片付けたら?」など語尾の違いや、
同じ言葉でも、相手の話すスピードやイントネーション、話している表情や態度によって、聞いた側の感情が何かしら動かされることもあるでしょう。


さらに、話を聞いているときの反応に目を向けてみると、
自分が理解したかどうかはさておき、うんうんと頷いていたり、「はい」「わかった」などの返事をしていることはないでしょうか。

その話題に興味がもてない、聞いても意味がよくわからない、疲れていてちゃんと聞けない、そういう反応をするクセがついている、そもそも聞きたくない・・・
その時々で理由や事情はいろいろあるとしても、相手にはわかりません。その結果、誤解が生じたり、関係性がギクシャクしたり、「ちゃんと聞いてないでしょ!」と相手が怒ったりすることも。


一緒に生活を始めたばかりのカップルやご夫婦だけでなく、何十年と共に生活を過ごしてきたカップルやご夫婦でも、
自分はちゃんと聞いているだろうか、相手が伝えたいことと自分の認識との間にずれがないだろうか、などと意識したり確認したりすることは、ほとんどないようです。



「相手の話を聞く」のがいかに難しいことか、少しおわかりいただけたでしょうか。

残念ながら、こうすれば相手の話をちゃんと聞くことができるという、お手軽な方法はありません。
「きく」と言っても、「聞く」「聴く」「訊く」など、いろいろな「きく」があります。


仕事であれば、聞いたことをメモすることが推奨されることはあるとしても、
日常生活の会話でいちいちメモを取るのは、あまり現実的とは言えないですね。
そういう場合は、後からでもいいので、会話の1コマを思い出して書いてみることをおススメしています。


実際に書いてみると、自分の聞き方のクセを見える化することができます。
最初は、“ 思いのほかちゃんと聞けてない自分 ” が見えてきて、
自分のことが恥ずかしくなったり、情けない気持ちになったりするかもしれません。


けれども、大丈夫です。
自分の現在地を知ることによって、スタート地点に立つことができるのですから。
皆さんも、自分の「聞き方」に意識を向けて、成長の一歩にしてみませんか?
カウンセリングでもお手伝いします。