「カウンセリング・心理療法を受けるということ」②
カウンセリングや心理療法を受けるきっかけやイメージは、人によっていろいろです。
けれども、実際に受けるということは、大変な勇気がいることに違いありません。 初めて訪れる面接室の扉が開き、部屋に入って座り、初めて会うカウンセラーに話をする・・・そんなことを考えると、すでに誰かに話したことのある内容であっても、今まで誰にも言わずにきたことであっても、カウンセラーは自分の話を聞いてどんな反応をするのだろうか、そこでどんなことが起こるのだろうか、いろいろな想像が頭の中をめぐるでしょう。
でも、受けてみないことにはわかりません。わからないということは、とても不安な気持ちになります。おそろしいとさえ感じるかもしれません。過去に傷ついた体験があれば、なお、こころは用心したくなるでしょう。それでも一歩を踏み出す、そんなときは、変化を求めているこころが後押ししているのではないかと感じます。
また、カウンセリングや心理療法を受ける、“タイミング”もあるようです。
カウンセリングを申し込むきっかけがあってから、実際に申し込みをしたり、初回の面接日を決めたり、それが1年前でもなく、3ヶ月先でもなく、なぜ今このタイミングなのか、不思議に思うことがあります。 それと同時に、必然性を感じることもあります。
面接を重ねていくなかで、「もっと早く来ていればよかった」という言葉を耳にすることもあります。けれども、カウンセリングを受けてみるまでは、どう変わっていくのかわかりません。それは未知の世界といえるでしょう。 この取り組みがどのような道のりになるのか、どこに向かって進んでいくのか、わからないことだらけの旅路に向かうには、それなりの準備が必要で、こころは自ずとそれをわかっていたのではないかと思ったりします。準備は、覚悟といえるかもしれません。
そして、カウンセリングや心理療法を受けるか受けないか、どちらも選択肢のひとつです。
子どもが身体的な病気以外の事情で学校を休む状況が続くと、親御さんや周りの大人としては、何か問題を抱えているのではないか、困っていることがあるなら早く解決してほしいという気持ちから、子どもにカウンセリングを勧めるのはごく自然なことだと思います。また、職場に気難しい人やパワハラ上司がいれば、その人にカウンセリングを受けてほしい、そしたら働きやすくなるのに、と思うことも多いでしょう。
そうはいっても、カウンセリングを受けてもらう、受けさせる、ということはなかなかの困難です。そこで、カウンセリングを受けてほしいと思っているその人が、カウンセリングを受けるというのもひとつの方法といえます。誰かが変わることで、その人を取り巻く人々との関係性に変化をもたらすこともあるのです。
このように考えると、「カウンセリングや心理療法を受ける」ということは、そこで何が起こり、どう変わっていくのか、誰にもわからないことですが、その人自身の変化だけでなく、そこから目に見えない小さな波紋が広がっていく、そんなイメージがあります。
人は、人とのかかわりの中で、影響を受けたり与えたりしているのだと、自分も含めて、つくづく感じます。