「お互いの違いを乗り越える」

ご夫婦やカップルのご相談では、
今まで何度も話し合ってきたけれどわかり合えない。
価値観が違う、ケンカばかりしている、いっそ別れた方がいいのではないか。
このようなお悩みが多くあります。


お互いに、わかろうとすればするほど、
「どうしてわからないんだ」「なんでわかってくれないの」
こんな深みにはまって身動きが取れない状況に陥っていらっしゃることも多く、
お話を伺うと、本当に悩ましい状況です。


家事のやり方や分担、子どもとの関りや教育方針、
LINEにまつわること、実家との付き合い方・・・
日常の些細なことから、人間関係に関わることまで、
内容は実にさまざまです。


楽しい時間もゼロではないけれど、
不満や不安が少しずつ溜まっていき、
あれこれ試してみたものの、限界を感じ、ようやくカウンセリングに辿り着く。
このような状況ですから、お互いにヘトヘトです。


けれども、じっくりお話を伺っていくと、
実際にふたりの間で行われている言動には表れていない、
もう少し複雑な思いや背景が感じられたりすることもあります。
しかも、そのことにご本人もそれほど自覚できていなかったりすることも。

ですから、問題はそれほど簡単ではありません。


平木典子・野末武義は、共著『大切な人とうまくいく「アサーション」』(1)の中で、次のように述べています。
「思春期の頃は、同じことを考え、同じものが好きで、同じことに感激できる友人関係は大切」だけれど、
「それは成長のプロセスにあるからであり、仲間がいることに安心して、自分の存在を肯定し、次のステージへ進むことができるからです。」

そして、
「反対にいえば、こういった『何もかもがぴったりで同じ』という関係は、この時期で卒業」であり、
互いの『違いをなくす』のではなく、『違いを乗り越える』という考え方が大切になる」。


つまり、ある程度、限られた世界で過ごしていた思春期という発達段階を卒業し、
今まで出会ったことのない人や世界に触れながら、
次の発達段階の課題に取り組んでいくことになるのですね。


かつては、自分にはないものを持っている相手に憧れや魅力を感じて、
お互いに惹かれ合ったはずなのに、
関係が親密になったり、一緒に生活を始めてみると、
相手のイヤな面ばかりが目についてしまうというご経験、ないでしょうか。


そのとき、相手に対するガッカリ感だけでなく、
自分に対するやるせなさを密かに感じている場合も見受けられます。
例えば、自分は親と違うタイプの人を選んだはずなのに、
親のような夫婦関係にはなりたくないと思っていたのに・・・


こういった状況を考えると、相手のことや、お互いの関係についてだけでなく、
自分自身に向き合う、自分のことを知るということも大切になると感じます。
むしろ、『自分自身に向き合うという課題に取り組むチャンスが訪れている』と
捉えることができるかもしれません。


また、先述のように、『違いをなくす』のではなく、『違いを乗り越える』
そのためには、自分とは違う存在である相手をちゃんと見ることが大事になります。
そして、まずは、自分の価値観や考えをある程度わかっていることが大切です。
なぜなら、誰もが自分を基準に相手を見ているからです。


しかしながら、自分のことだけれど、自分では意外とわかっていないもの。
今までの自分はどのような価値観をもとに生きてきたのだろう。
自分はどのような感じ方や考え方をする傾向があるのだろう。
皆さんは、いかがでしょうか。


自分のことを、よりわかると、相手の言動が少し違って感じられることがあります。
それによって、相手への理解だけでなく、自分の視野が広がったり、深まったり。
その成長した自分で、改めて相手を見る。
このような繰り返しは、何とも骨の折れる地道な作業です。


この地道な作業を通して、お互いの違いをわかり、違いを乗り越えていったとしても、
関係を維持することになるのか、別れるという道に進むのか、
正直なところ、誰にもわかりません。
また、関係を維持することが必ずしも最善とは限らないこともあります。


私としては、結果として、関係を維持することにならなかったとしても、
それまでの道程を通して、
相手や自分のことをわかろうとする姿勢や、
相手と自分との違いをちゃんと見ようと努力すること、
このような経験を積むことによって、人は成長するのではないかと考えます。


さらに言うと、夫婦やカップルに限らず、
どのような人間関係にも共通することではないでしょうか。


ただし、自分の課題に取り組むための準備ができている状態なのか、
何かきっかけがあれば取り組むことができそうなのかなどは、
その方によっても、そのときの状態や環境によっても違います。
一概に、こうしたらよい、こうすればできると言えないところが難しいとつくづく感じます。


ちょっとしたケンカやすれ違いは見逃されやすいもの。
それでも日常生活はまわっていきます。

それほど深刻な状況ではないけれど、
相手のことをより理解したい方、
そのために自分自身を理解したい方も、
カウンセリングをご活用いただければと思います。

おふたりご一緒でも、どちらかおひとりだけでも、
お気軽にご相談ください。

<参考文献>
(1)平木典子・野末武義(2025)『大切な人とうまくいく「アサーション」』三笠書房