「やめたいのに やめられない “ぐるぐる思考”」

ふとした瞬間に、過去の辛い出来事が頭をよぎること、ありませんか?
それが、次から次へと芋づる式に思い出され、止まらなくなってしまう・・・
そんな “ぐるぐる思考” に悩まされて、ご相談にいらっしゃる方も少なくないです。


「どうしてあんなことをやってしまったんだろう」
「あのとき、~だったのは自分のせいだ」
「嫌われたんじゃないか、きっとそうにちがいない」


最近の出来事から、遠い昔の古い記憶まで、
鮮明な場面もあれば、ぼんやりとしたものも。
もう考えたくないのに、走馬灯のように頭の中をぐるぐると巡る。


後悔やら、罪悪感やらが出てきて、自分を責め、自分に嫌気がさし、
何も手につかなくなり、頭も身体も心もへとへとに。


このようなネガティブな考えが止まらない “ぐるぐる思考” は、
過去だけでなく、まだ起こっていない未来のことについても起こります。


「あーなったらどうしよう、こうなったら困る」
「 ~と思われるんじゃないか」
「きっとうまくいかないに違いない・・・」


よからぬ想像が次々と押し寄せて、不安が膨らみ、無力感に陥り、
身動きが取れなくなってしまうこと、ないでしょうか。


いずれにしても、こういった “ぐるぐる思考” は、
やめたい、考えないようにしよう、と思えば思うほど、やめられないもの。
なぜなら、「やめたい」「考えない」ということ自体が、
その “ぐるぐる思考” に意識を向けてしまっていることになるからです。


このようなときに、
「ぐるぐる思考から離れる行動」のひとつとして試してほしいのが、
「香りを嗅ぐ」というシンプルな行動です。


人間の五感のなかで、最も早く脳に働きかけるのが臭覚だといわれています。
臭覚以外(視覚、聴覚、触覚、味覚)が受け取った感覚情報は、視床というところを通って大脳新皮質に伝達されますが、
臭覚情報は、大脳辺縁系に直接伝達されます。


そのため、慶応義塾大学理工学部の満倉靖恵教授によると、
触覚は、肌に触れてから脳で認識するまでに1秒程度かかるのに対して、
においは、嗅いでから0.2秒で脳が反応するそうです。


大脳辺縁系に直接届く臭覚情報を取り入れる
―― つまり、「香りを嗅ぐ」ことで、
延々と巡る思考のループを素早く断ち切ることができ、
“ぐるぐる思考” から離れるきっかけとなります。

では、「香りを嗅ぐ」ことをどのように活用したらよいでしょうか。

必要なタイミングで嗅ぐ
先述の満倉靖恵教授によると、
においを空間に充満させるよりも、必要なタイミングで嗅ぐほうが脳には良い刺激となるそうです。
しかも、その効果は1時間半~2時間ほど持続するとのこと。

② 気分とおススメの香り
たとえば
・リラックスしたいとき・・・・ラベンダー、サンダルウッド
・集中力を高めたいとき・・・・ペパーミント
・明るく前向きな気分になりたいとき・・・グレープフルーツ

③ 自分に合った香りを選ぶ
香りに対する反応も個人差があるため、
良いと言われている香りでも、嫌なにおいを嗅ぐとストレスになってしまうことも。
自分にとって心地よい香りを見つけておくと安心ですね。

④ 習慣化する
「香りを嗅ぐ」という行動を生活の中に取り入れて、習慣化しておくと効果的です。
たとえば
・お気に入りの香りをカバンに入れて持ち歩く
・起床時や食後など、決まったタイミングで嗅ぐ
布団に入ると “ぐるぐる思考” が始まってしまう、入浴中に始まるという方は、
枕元やバスルームに香りを用意しておくのもいいかもしれません。


“ぐるぐる思考” は、何百回と反芻されてきたパターン。
そう簡単にはなくなりません。
だからこそ、たとえ一時的でも、香りを嗅ぐという刺激によって、
脳が新しいパターンを学習することは、貴重な体験となるはず。


脳の活動のバランスが整うことにもなり、
自分の思考のクセについて理解を深めるとか、
「今 ここ」に意識を向ける練習をする上でも、役立つのではないかと考えます。


それでもうまくいかないと感じたり、他の対処法も考えたい方、
自分の “ぐるぐる思考” についてもっと理解を深めたい方は、
カウンセリングをご活用するのもひとつの方法です。

無理にやめようと頑張り過ぎず、一緒に考えていきましょう。


(参考資料:ウィキペディア/脳科学辞典/日経グッディ)